文化人類学者の塩月亮子さんから、本を謹呈されたので、紹介する。
『月刊アジア遊学』No.84「特集 アジアのスピリチュアリティ」というもの。
これは一応形的には月刊誌というのだろうか。
定期的な連載記事のようなものはなく、約250頁のすべてが特集記事(というか論文)にあてられている。
出版元の勉誠出版のサイトでは「これまでの日本とアジアとの歴史的関係を見つめ直し、アジア世界への新たな理解と展望を拓き、地球文化の創造に向け、共生のあり方を模索する。(毎月20日発行)」とある。
Amazonでも購入することができる。
- 出版社/メーカー: 勉誠出版
- 発売日: 2006/03
- メディア: 単行本
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ご承知のように、私は「琉球の霊性探求ネットワーク」である「火の神☆クラブ(ヒヌカンクラブ)」を主催している。
この本を謹呈されたのは、この中で塩月さんが書いている「沖縄のスピリチュアリティ−シャーマニズム・インターネット・ローカリティをめぐって」で、ヒヌカンクラブが紹介されているからだ。
冒頭の要約文には、こうある。
本稿では、ネットにみられる沖縄シャーマニズムに注目したスピリチュアリティ探求の活動等から、「沖縄のスピリチュアリティ」の特徴を明らかにしようと試みた。その結果、始原の世界を喚起させる琉球の聖地を体感すること、すなわち<土地>のもつ力、<ローカリティ>を重視することにより、自己のスピリチュアリティを高めようとする特徴がみられることが明らかになった。
塩月さんのことは、ヒヌカン☆クラブの前身の巫女☆クラブの時代から知っていて、ネット上で塩月さんの論文を見つけて、HPにリンクを張らせてもらうお願いのメールを送ったのが最初だったように思う。
その後、塩月さんはヒヌカンクラブに注目されて、何度か論文や新聞記事で紹介してもらっている。
ヒヌカンクラブは、サイトの紹介ページにあるように、塩月さんだけでなく、これまで何度かマスコミに取り上げられたことがある。
正直いうと、私が主催する他のグループなどはともかく、このヒヌカンクラブだけは、いたずらにマスコミに取り上げてもらいたくないという気持がある。
どうしても、取り上げ方が興味本位で終わってしまいがちだからというのもある。
だが塩月さんは真摯な態度で紹介してくださっているので、たとえ事後承諾として知らされても、安心していられる。
ここでは、塩月さん自身がヒヌカンクラブのオフ会に参加されたことについても触れている。
昨年の7月だったか、あんまり人が集まらなかったけれども、ご夫妻で参加していただいて楽しいひとときを過ごした。
実際にお会いして思ったことは、塩月さんにもご主人にも言えることだが、スピリチュアリティというものを外部から客観的に眺めている学者ではなく、琉球的スピリチュアリティの本質をよく理解されて、その中に自ら深く入り込んでいこうとしているところに共感がもてたものだ。
オフ会といえば、ヒヌカンクラブは沖縄県民がけっこういることもあるが、なぜか東京よりも沖縄オフ会をした方が人が集まる。
東京近辺でオフ会を企画してもなかなか人が集まらないことの理由のひとつとして、子供がいる主婦が多いというのもあるようだ。
塩月さんご夫妻をまたゲストとして呼んだら、もっと集まってくれるだろうか。
(メンバー各位>この件に関するご意見は、MLまたはMIXI掲示板で)
この論文の中で、本土の人間がカミンチューを求めてやってくることに対して、地元ではあまりよく思わない人々もいることが書かれている。
それを知って、ちょっと考えさせられた。
自分たちのシャーマン、自分たちの神さまが、自分たちだけのものではなくなって「グローバル化」することに対して、抵抗がある人々がいるようなのだ。
だが、シャーマン側は、本土から訪れる人々を歓迎することの方が多いようだ。
私が知っている限りでは、ごく一部、本土から来た人間の判示を行うことを拒否する人がいるようだが。
塩月さんは、ネット上で「霊性のネットワーク」が形成されていく中で、同時に沖縄などの聖地を訪れる人々に注目する。
だが、上に書いたように、そのような目的で本土から訪れる人々を好ましく思わない地元の人々も存在する。
反面、シャーマンたちは、地元の人たちであろうと本土からの訪問者であろうと、悩む人々は区別なく救う傾向があるという。
そして「シャーマンはますますグローバル化し、地元の人はグローバル化に反発するという矛盾が生ずる」と述べている。
いつも思うことだが、塩月さんがいつも取り上げてくれるほど、ヒヌカンクラブってそんなに研究対象として面白いのかな、と。
ヒヌカンクラブの本体は、メンバーが増えてきたと思ったらやめていく人もいたりして、50人を超えたことはない。
MIXI支部というのもあるが、こちらも100人ちょっとで、他にたくさんあるスピリチュアル系の大きなコミュニティーの比ではない。
主催者がカリスマ的な人間的魅力を具えているわけでもない。
MIXIには、もっともっと活発で面白いことをやっているグループがたくさんあるのにと思うのだ。
シャーマニズムとは別に、MIXIを含めた現在のネット上のスピリチュアリティの動向を見ていると、「聖地巡礼」に注目が集まりつつあることを強く感じる。
世界の平和を祈ったり、地震などの自然災害を沈静するための祈りを行うために、各地の聖地を訪れる人々。
日本の宗教は歴史的にみても現世利益から抜け出せないという嫌いがあるが、いままであったようなオカルトブームなどとはちょっと違って、世界平和などのような自己利益を超えたところにある目的で行動しようという若者が現れ始めていることを感じる。
塩月さんあたりが、このような現象に注目してくれると、おもしろい研究になるのではないかと思うのだが。
この号には、他にも面白い論文がいろいろとある。
特に興味をもったものを、題名だけでもあげておく。
- ご利益とスピリチュアリティ、川端亮
- 医療看護および社会福祉の文脈におけるスピリチュアリティ、古澤有峰
- 聖霊の入る日−ラダックの巫者儀礼にみる憑霊と吸い出し、宮坂清
- 現代社会が必要とする日本的スピリチュアリティ、カール・ベッカー
- ボランティア、利他主義、絆の気づき、稲場圭信
- 現代の四国遍路におけるスピリチュアリティ
【参考サイト】
- 塩月亮子(しおつき・りょうこ)のほーむぺーじ
http://homepage2.nifty.com/RYOKO/ - 勉誠出版
http://www.bensey.co.jp/menu/asia0.html - 火の神☆クラブ−琉球的霊性探求ネットワーク
http://www.ne.jp/asahi/pasar/tokek/TG/mikoclub/
付記
塩月さんの論文が読みたいというリクエストがあったので、リンクを貼り付けておきます。
スピナビというサイトでの検索結果です。
ヒヌカンクラブが紹介されているものも、あると思います。