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火星+エジプト文明の建造者[9神]との接触


火星+エジプト文明の建造者[9神]との接触
リン・ピクネット&クライブ・プリンス著、林陽訳、徳間書店

火星+エジプト文明の建造者「9神」との接触―シリウス起源の超知性との聖なる扉「スターゲート」の研究 (超知ライブラリー)

火星+エジプト文明の建造者「9神」との接触―シリウス起源の超知性との聖なる扉「スターゲート」の研究 (超知ライブラリー)


読んでいるうちに、気が滅入ってくる本だ。おぞましささえ感じる。
こんな本、読まないで済ませられれば、それがいちばんいいだろう。
だいたい、この書名の怪しさ。
原書の『THE STARGATE CONSPIRACY』(スターゲイトの陰謀)の方がよっぽどわかりやすくて良かったのでは?
だが、その内容には、霊性を探求する者として避けて通れない情報が多々含まれている。
例のコードネーム「ビードロ」の執筆にあたって、どうしても読まざるを得なくなり、仕方なく、400頁以上あるこの本を最後まで読んだ。


本の帯には、こうある。

ハンコック、ボーバルら新エジプト学者、ホーグランドら火星の人工建造物研究者は秘密の情報源[ザ・ナイン=古代の神々]のチャネリング・メッセージに突き動かされていた!!
アメリカの最高政策決定機関にも甚大影響!!


これだけを読んで、内容を理解して買おうと思う人は、ごくわずかだろう。
たしかに、エジプト文明や「火星で見つかった人工建造物」の話題も出てくるが、それだけの本ではない。
この本の内容を要約するのは、かなり難しい作業だ。
チャネリング、霊のご託宣など、呼ばれ方はさまざまだが、[ザ・ナイン]と呼ばれる高次元の存在がいて、以前から人類にコンタクトを続けているという。
それが『創作』か『真実』かは別として。
そして、そこにはCIA、FBI、NASAなどの極秘調査がからんでくる。
これらの機関は、フリーメイソン、バラ十字会、神智学協会、OTO(性魔術で有名)などの秘密結社・神秘主義団体とも複雑にかかわっている。
そして、この世界の主導的立場にある人々、たとえばマダム・ブラバッキー、アリス・ベイリー、ユリ・ゲラーエドガー・ケイシーアレイスター・クロウリーグラハム・ハンコックたちも、この[9神]という存在にかかわってくる。
いわゆるオカルト、ニューエイジ運動、精神世界などに惹かれる人々の大半は、好むと好まざるとにかかわらず、このような団体や人々から大きな影響を受けていることになる。


この本、「トンデモ」的な要素が多分にあるから、取り扱いに注意だ。
著者の二人は英国の調査作家であり、他にも『ダ・ヴィンチ・コード』のタネ本である『マグダラとヨハネのミステリー』や『トリノ聖骸布の謎』などの話題と波乱を呼ぶ本を何冊か書いている。
著者たちは、この[九人(THE NINE)]の実在性については最後まで懐疑的な態度をとっている。
だが、その存在が結果的に世界中に及ぼしている影響力が甚大であることは認めている。
非常に恐ろしいことだが、そこに書かれたことをすべて否定するのは難しい。
彼らは、こう書いている。

私たちはニューエイジの「愛と光」に隠れた極右思想をますます憂慮している。

著者らによると「フリーメイソンを称えてやまない」というこの[9神]とは、どういう存在なのか。
あるいはすべては創作なのか。

エリート主義?差別意識?

実際、そのような「高次元の存在」は、時として平然と人種差別的な言動を残す。
たとえば、二人はこう書いている。

 私たちは「九人」の歴史とそのメッセージをよく調べる必要がありそうだ。アリス・ベーリーを通してチャネリングしてきた初期の「九人」は、日本への原爆投下についてこう言った。
「日本人は第四根人種の神経系を持つ滅亡すべき民である。閉鎖的魂が解放されて当然である。日本人への原爆使用が正しかった理由はここにある」


ちなみに、ここに出てくるアリス・ベイリー(1880-1949)は、神智学協会のマダム・ブラバッキーに影響を受けて協会に入り、分派的組織をつくったチャネラーのはしりだ。
著者らによれば、今のアーリア人はアトランティス直系の第五根人種だと主張するブラバッキーの説はナチスに多大な影響を与え、アーリア民族優越思想、超人思想をつくりあげたという。
また、この陰謀には反イスラム的要素が見え隠れしているといい、CIAがそれを推進する理由はどこにあるのかと疑問を投げている。

アヤシイ領域

[九人]によると、エジプトのギザのピラミッドには秘密の部屋があり、スフィンクスに秘密の入口があるという。
そこにある「記録の宝庫」は、将来発見されるはずだった。
このような主張は、エドガー・ケイシーのリーディングやバラ十字会の主張と不思議と一致する。
ユリ・ゲラーを有名にさせたアンドリア・プハーリックは、著者らによればCIAのエージェントだったという。
そして、ゲラーが[九人]に疑念を抱いて離れていった後も、さまざまなサイキック(霊能者)や超能力者を仲間に入れて、催眠状態による[九人]へのチャネリングなどをさせているという。
あのライアル・ワトソンは、しばしばこの会合に参加していたらしいが、公式の伝記作家になるように[九人]に求められていたが、辞退したという。
この[九人]というのは、シリウス星と関係しているらしい。
そして、彼らが「サタンの使い、獣」と呼ぶプレアデスと敵対する存在だという。


九人にかかわった人々の中で、不審な死に方をしている人がいるのは何故なのか。
プハーリック自身も、CIAから三度命を狙われたと語っていたが、その後に家の階段から落ちて死んでいる。
アメリカ副大統領だったヘンリー・ウォレスはプハーリックの後援者で、高位のフリーメイソンかつ神智学者だったという。
彼はアリス・ベイリーの思想に傾倒し、またエドガー・ケイシーとも親しくしていたらしい。
著者らの主張によると、エサレン研究所、映画『スター・トレック』、リモートビューイングなどには、[九人」が大いにかかわっているという。
コリン・ウィルソンは彼らを「霊界の詐欺師」と呼び、ユリ・ゲラーは「道化師の文明」と呼んだ。
この存在の影響は、UFOの世界にも深く入り込んでいるようだ。
私は若い頃にUFOを研究していて、大学のときにUFO研究会を設立して関連団体に所属していたこともある。
立正大学URI』といって、マスコミを通じてUFOの情報を提供することを主な目的としていた。
大学4年の時だったからほとんど活動はできなかったが、後輩たちが雑誌に記事を執筆したり本を出したこともある。
私がそのような世界から離れていった理由として、UFOにかかわると、影の政府とか世界的陰謀とかの怪しい領域に入っていかざるを得なくなることに嫌気がさしたということもある。
この本では、UFO研究の世界で著名なジャック・ヴァレーの言葉を引用している。

「宇宙勢力への恐怖心と、UFOコンタクトにからむ感情を、政治目的につなげようとする集団がいる。彼らは信じがたい霊的恫喝を働ける」


こうしたことは、ある機関による『実験』なのか。
それとも、ある意図による『実践』なのか。
著者たちの結論は、こうだ。

かりに「九人」が真実だと判明するようなことがあれば、彼らの存在もお告げも拒否すべきである。人類が彼らより劣った段階から始まったと仮定しても、基本倫理の点では、私たちは彼らよりはるかに進歩しているし、進歩しなければならない。


この二人の意見には、おおむね同意できる。
30年以上にわたってこの世界を放浪してきて、良いものも悪いものもたくさん見てきた人間として[九人]に感じることは、『良心』とか『倫理』というものの欠如だ。
私はいつも、このことを「ニセモノ」を見分ける判断基準のひとつとしている。
真に高次元の存在が、たとえば人間の限りない欲望を煽る黒(白)魔術や金銭崇拝に介在するだろうかということは、よく考えてみた方が良いのではないか。
「上には上がある」ということを理解できない人たちが、この世界(業界?)にはあまりにも多すぎると思う。


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