探求三昧(はてな支部) - 地震前兆/超常現象研究家・百瀬直也が地震・災害予知・防災・予言などを探求

地震前兆・超常現象研究家の百瀬直也が地震予知・災害・防災・予言などを探求するWeb/ブログ(はてな旧サイト)




ライアル・ワトソン氏死去


今朝の朝日新聞朝刊を読んでいて、ライアル・ワトソン(Lyall Watson)氏が亡くなったことを知った。
2008年6月25日に、69歳で死去したという。
東アフリカの生命科学者・動物学者だった。


ワトソン氏の著作は、かなりいろいろ読んできた。
『スーパーネイチュア』に始まって、『生命潮流』、『アフリカの白い呪術師』、『人間死ぬとどうなる』、『匂いの記憶』、『スーパーネイチュアII』などなど。
『生命潮流』の副題が「来るべきものの予感」とあるのを見て、ゾクゾクしたものだった。
『スーパーネイチュア』は1973年に書かれた本(邦訳は1974年刊)だから、十代後半頃に読んでいたことになる。
いわゆる「超自然的なもの」の実例を、これでもか、これでもかと提示している本だ。
科学者が超自然について真剣に語っている、かなりエキサイティングな本だった。
だが、いま冷静に考えてみると、その内容にはアヤシゲな記述もあり、どこまで信じて良いのか疑問が生じるとろこも少なくない。
信憑性を疑われる、怪しげな本からの引用などもあった。


自分の中では、科学者よりも「作家」だった。
科学者としては、ちょっと「?」なところがあった。
『生命潮流』に書かれた、有名な「百匹目の猿現象」などもそうだ。
いわく、宮崎県の幸島に棲息する猿の一頭が海水でイモを洗って食べるようになった。
そうすると、イモについた砂を落とせるし、適度に塩味がついて美味になるのだろう。
同じ行動をとる猿の数が、ある閾値(仮に100匹とする)を越えたときに、その行動が群れ全体に広がり、さらには場所を隔てた大分県高崎山の猿の群れでも、突然に同じ行動が見られるようになった。
これが「100匹目のサル現象」とされて、一大ブームとなった。
船井幸雄氏なども、『百匹目の猿―思いが世界を変える』などの著作で、この説を日本に広める役割を果たしていた。


だが、このニホンザルの話はワトソン自身が創作したもので、イモ洗いの技術が群全体に伝わったという事実は…
まったくなかった。
これでは、事実を「捏造した」と言われても仕方ないだろう。
ライアル・ワトソン自身も、これが全くの創作だったことを認めたそうだ。
実際にあったことと誤解されかねないニュアンスでこのようなことを書くのは、科学者として、やってはいけないことだと思う。
詳しい事情は、下記Wikipediaのページに書かれている。

ワトソン氏の『スーパーネイチュア』などの著作については、松岡正剛氏なども絶賛していたが、自分的には、あるときから急速に熱が醒めていったかもしれない。


ワトソン氏の著作で、いちばん感動して何度も何度も読んだのは、『未知の贈り物−自然と超自然の間』だった。
著者自身も、いちばん好きな本だと語っているもの。
インドネシアの孤島ヌス・タリアンで著者が実際に見た体験をもとにした、ノンフィクションだとされている。
主人公は、その島に住む、不思議な力をもつティアという少女。
工作舎の初版は、カバーが青一色で、印字も青字だった。


ティアによると、あらゆる音には色がついていた。
ときには、キリストのような癒しや蘇生も行った。
シャーマンのような少女だった。
だが、そのような能力をもつ人間が幸福な生涯を送れないのは世の常。
必然の帰結としての村八分
最後に待っていたのは、長老との命を賭けた対決。
そして、そこには感動的な結末があった。
最後まで読み終えたあと、しばらくは何にも考えられなかった。


だが…
百匹目の猿」のようなことをする人だから、この本の内容も、どこまでがノンフィクションなのか、創作(捏造)なのか、疑わしくなってくる。
「若い純粋な魂」は、傷ついていたかもしれない。
最初からフィクションだと思えば、その熱意も感動も無駄にはならないだろうが。
それでもやはり、個人的には、たんなるフィクションにそれほど感動していた自分が空しくなるところもあるだろうが。


そうはいっても、ライアル・ワトソン博士に多くを学んだのは確かだ。
自分の青春の一部だった。
いま思えば、『スーパーネイチュア』は、私に「超自然」の探究を一生続ける自信を与えてくれたのかもしれない。
良くも悪くも、あのような人はもう出てこないだろう。
ご冥福を祈りたい。


スーパーネイチュア

スーパーネイチュア

生命潮流―来たるべきものの予感

生命潮流―来たるべきものの予感

未知の贈りもの (ちくま文庫)

未知の贈りもの (ちくま文庫)


Copyright (C) 2004-2020 Naoya Momose - 百瀬直也. All Rights Reserved. Email