インド洋付近で、初夏から晩秋にかけて東部で海水温が低くなり、西部で海水温が高くなる大気海洋現象である「ダイポールモード現象」があるが、この発生中には、インド洋のインドネシアなどで大地震が多く発生する傾向があることを発見した。
「ダイポールモード現象」とは
今朝もまた、短時間で新たな発見をしてしまった。
まず、ダイポールモード現象について説明しなければならない。
英語では、Indian Ocean dipole mode、略してIOD。
インド洋の熱帯域で、初夏から晩秋にかけて東部で海水温が低くなり、西部で海水温が高くなる大気海洋現象のことを言う。
後述する「負」と対比のため、これを「正のダイポールモード現象」とする。
これは、5、6年に1度程度の頻度で発生する。
風や気候の変化を含み、エルニーニョ現象と同様に、世界の気候に大きな影響を与えるものだ。
発生によって、日本に猛暑をもたらすことも多い。
2年連続で発生することは珍しい。
負のダイポールモード現象
正のダイポールモード現象に対して、「負のダイポールモード」もある。
こちらは、インド洋で逆に南東貿易風が弱まると、東から西への海流が滞るため高温の海水が東側に滞留し、西側は海水温が低下する現象をいう。
高温となった東側では対流活動が活発化する。
正負のダイポールモード現象では、インド洋は下記の図のようになる。
赤が海水温が高く、濃い青が低いことを意味する。
地震との関係は?
このブログでダイポールモード現象を取り上げるからには、「地震と関係あるんかいな?」という疑問があるからだ。
海洋現象であるからには、たとえば黒潮の大蛇行などと同様に、少なくとも海溝型地震の発生に影響を与えるのではないか?
そう思って、調べてみた。
ダイポールモード現象とインド洋の大地震
以下に、ダイポールモード現象の発生がわかっている1958年以降の正・負のダイポールモード現象の発生年と、各年にインド洋付近で海溝型大地震が起きた場合は、それを列記する。
【凡例】:正=正のダイポールモード、負=負のダイポールモード、無=ダイポールモード無し
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1958年:負
1960年:負
1961年:正:猛暑。
1963年:正:
1963/11/04:インドネシア・バンダ海、M8.3
1964年:負:猛暑。
1965年:無:
1965/01/24:インドネシア、M8.2
1967年:正:猛暑。
1968年:負
1970年:負
1971年:無:
1971/07/14:パプアニューギニア、M8.0
1972年:正:
1972/12/02:フィリピン、ミンダナオ島、M8.0
1972/08/16:フィリピン、ミンダナオ地震、M8.0、犠牲者3,700人。
1974年:負
1976年:無:
1976/06/25:インドネシア、M7.1、犠牲者5,000人。
1977年:正:
1977/08/19:スンバワ島、M8.3、犠牲者185人。
1980年:負
1981年:無:01/19:インドネシア、M6.7、犠牲者1,400人
1982年:正
1983年:正
1985年:負:猛暑。
1989年:負:
1989/12/28:オーストラリア、ニューカッスル地震、M5.6
1990年:無:
1990/07/16:フィリピン、バギオ大地震、Mw7.7、犠牲者1,621人。
1992年:負:猛暑。
1992/12/12:インドネシア、フローレス島、Mw7.8、犠牲者2500人
1994年:正:猛暑。
1994/06/03:東ジャワ州、Mw7.8、犠牲者280人
1994/11/15:フィリピン中部・津波、Mw7.1、死傷者200人。
1995年:無:
1995/05/14:東ティモール、Mw6.9、津波、死傷者40人
1996年:負:猛暑。
1996/02/17:インドネシア、ビアク島・津波、Mw8.2、犠牲者・行方不明者165人。
1997年:正:猛暑。
1998年:無:猛暑。
1998/07/17日:パプアニューギニア、Mw7.0、犠牲者2,500人。
2000年:無:猛暑。
2000/06/04:スマトラ島沖地震、Mw8.0、犠牲者100人以上、
2000/11/16:ニューアイルランド島、Mw8.0、犠牲者2人。
2001年:正:猛暑。
2004年:無:猛暑。
2004/12/26:スマトラ島沖地震、Mw 9.1、犠牲者・行方不明者227,898人
2005年:正:猛暑。03/28:スマトラ島沖地震、Mw8.6、犠牲者千人~2千人
2006年:正:猛暑。
2006/05/27:ジャワ島中部地震、Mw6.2、犠牲者5,000人以上
2006/07/17:ジャワ島南西沖地震、Mw7.7、犠牲者500人以上。
2007年:正:猛暑。
2007/09/12:スマトラ島沖地震、Mww8.5、犠牲者25人
2008年:正:猛暑。
2009年:無:
2009/09/02:ジャワ島西部沖、Mw7.0、犠牲者・行方不明者130人。
2009/09/30:スマトラ島沖地震、Mw7.7、犠牲者1100人以上
2010年:正:猛暑。
2010/04/06:スマトラ島沖地震、Mw8.0
2010/07/23:フィリピン、ミンダナオ島、Mw7.6
2010/10/25:スマトラ島沖地震、Mw7.9、犠牲者400人以上、津波。
2012年:正:猛暑。
2012/04/11:スマトラ島沖地震、Mww8.7
2012/02/06:フィリピン、ネグロス島沖地震、Mw6.7、犠牲者43人以上
2012/04/11:スマトラ島沖地震、Mw8.7
2013年:正:猛暑。
2013/10/15:フィリピン、ボホール島地震、Mw7.1
2017年:正
2018年:正:猛暑。
2018/02/26:パプアニューギニア地震、Mw7.5、犠牲者160人、
2018/08/05:ロンボク島地震、Mw6.9、犠牲者381人
2018/09/28:スラウェシ島地震、Mw7.5、犠牲者2113人
2019年:正
ダイポールモードと大地震の集計
上記のデータ中で、正負ダイポールモードが発生した回数(年数)は以下の通り。
発生回数:
正:20回
負:11回
無:30回
次に、上記大地震の発生を集計して、1年間平均の地震発生の回数を計算すると、以下のようになる。
地震発生の集計:
正:17回 →0.85回/年
負:05回 →0.45回/年
無:11回 →0.36回/年
ダイポールモード現象とインド洋の大地震発生の関係
以上を見ると、以下のような傾向があることがわかる。
【傾向】
・正のダイポールモード現象の発生時期に、インド洋付近で大地震が多く起きやすい。
・負のダイポールモード現象の発生時期にも、正の時ほどではないが、ダイポールモード現象が発生していない時期に比べると大地震が多く起きている。
猛暑との関係は?
前述のように、ダイポールモード現象の発生時には、日本に猛暑をもたらすこともあるとのことで、集計してみた。
ダイポールモード現象発生時の日本の猛暑:
正:12回
負:6回
全体:17回
前述のように、正(20回)と負(11回)の比率を考慮すると、猛暑の発生は正負どちらも変わらない頻度で起きていることになる。
つまり、ダイポールモードが発生すると、それが正でも負でも、日本で夏に猛暑となる可能性があることになる(すべてのケースではない)。
以上のことは、今日作成した探求三昧Web上の固定ページ『【研究】インド洋のダイポールモード現象とインド洋の大地震発生の関係』でも、同様のことをまとめている。
「インド洋のエルニーニョ」
ダイポールモード現象は、「インド洋のエルニーニョ」などとも呼ばれている。
つまり、太平洋上で起きるエルニーニョ現象に類似する部分がある。
エルニーニョ現象と環太平洋上の大地震の発生には関係があり、発生中と終息後1年間ぐらいには、大地震が多く発生する傾向があることを発見した。
日本では暖冬をもたらすか
ダイポールモード発生中には、前述のように日本で猛暑になることが多い。
そのほかに、冬季には暖冬になる傾向があるという。
エルニーニョ現象も暖冬と関連がある可能性があり、やはり海洋上の現象は気候にも影響を与えることがあるということになる。
同じ海洋現象で、現在発生中の黒潮大蛇行の期間中には、日本で降雪が多くなるという。
そうなると、「豪雪?」「暖冬?」どっち?と、条件が複雑になってくるが、そのあたりは今後の探求の課題としたい。
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