探求三昧(はてな支部) - 地震前兆/超常現象研究家・百瀬直也が地震・災害予知・防災・予言などを探求

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天才イチローが打ち立てた金字塔


名古屋人の年?

どうも今年は、野球の世界に関していえば、名古屋人の年であるらしい。
セントラルリーグでは、名古屋に本拠を置く中日が優勝し、愛知県出身のイチロー(鈴木一郎)が大リーグ記録を打ち立てた。いまごろ名古屋では大変な騒ぎだろう。
この数日間、気が気ではなかったが、ついにイチローが年間最多安打記録257本を更新した。今日3本ヒットを打って、シスラーの記録を2本上回った。ジョージ・シスラーが、なんと84年前の1920年に作って以来、誰にも破られてこなかったものだ。
さすがの天才バッターも「産みの苦しみ」があったようで、9月30日(米国時間)の試合では、珍しく外へ逃げてボールになる変化球を空振りして三振した。あまりにもまわりから騒がれるから、「早く決めて楽になりたい」というのもあったのだろう。
この記録はたしかに大記録ではあるが、あんまり「公平」なものではない。この手の記録は、最も打撃機会が多い1番バッターが誰よりも有利だからだ。ある野球選手がヒットが多いか少ないかは、あくまでも打率で判断するのが最も公正な方法であって、たくさん打撃機会が巡ってくる一番打者がいちばん取りやすい記録でしかない。
また、打撃成績が良いチームほど出塁率が高く、それだけ打順が回ってくる回数が多くなる。その点では、今年のマリナーズは成績が悪かったので、イチローはそういう「不利な」状況で前人未到の大記録を達成したといえるだろう。
べつにイチローの大記録にケチを付けたいわけではない。ソフトウエア・エンジニアのような仕事をやっていると、ロジカルでないことが許されなくなるのは悪いクセだ。だがアメリカ人たちは、この記録が公平ではないのを承知で、その偉業を褒め称えているのだろう。アメリカの野球ファンやマスコミの記録好きもあるだろう。
イチローファンの人たち、ごめんなさい。これから「持ち上げ」を始めますので(笑)。

芸術的バッティング

イチローは野球に対する姿勢は「職人」だが、その結果として生まれるヒットを見ると「芸術家」と呼びたくなる。ヒットに美しさがある。個人的には、内野安打よりも、ドライブがかかったライナーでセンター前に落ちるようなヒットを見るのが好きだ。同じくレフト前への流し打ちもカッコイイ。腰をうまく回転させて狙って打つホームランも、もうちょっと多く見たいものだ。
NHKテレビで、イチローを特集する米国のテレビ番組を紹介していた。そこで解説されていたイチローのバッティングは、セオリーからするとフォームが「メチャクチャ」だという。そのことは以前からそうだと思っていた。
一般的に、良い打撃フォームと言われているのは、「体重を後ろに残す」ことと「身体の軸がぶれない」ことだという。だが、イチローのフォームはその2点とも、その反対のフォームになっている。だが、日本のマスコミでそのことが話題にされたことを見たことがなかった。
イチローにとってはフォームが良いか悪いかなんてどうでも良いことで、結果として野手がいないところへボールが行けば良いのだと思っているのだろう。ちょうど往年の長嶋が、フォームが崩れて泳がされても、まるで狙っているかのように遊撃手と三塁手の間を抜くヒットを打ったように。
その反面イチローは、こう打てば容易にヒットになるだろうという時でも、容易な道を選ばずに、わざわざ難しい方法で打っていることもあるように思う。これもひとつのこだわりなのだろう。
「中前安打なら、いつでも打てる」と、この天才打者は豪語する。それはハッタリではないだろう。打率を上げるには、ピッチャー返しばかり狙って打てばいいわけで、本当にそれを実行すれば、4割打者も夢ではないかもしれない。だが、「求道者」であるイチローは、そういう安直な道を決して選ばない。

「天才打者」を生み出したもの

イチローが「安打製造機」である原因は、小学校4年生から毎日のように通ったバッティングセンターで鍛えた動体視力と、ミートする直前の瞬間的な判断力がメインではないか。もちろん生まれもった才能もあるだろうが。
たとえ体の軸がぶれても、体が泳いでも、たとえば地面につくかつかないかの低い球でも救い上げてヒットにしてしまう。あんなのを見ていると「人間業じゃない」と思ってしまう。当たり前のことだが、普通の打者にとって低めの球が打ちにくいのは、それだけ球が目から遠くにあるからジャストミートが難しくなるからだ。
まだオリックスにいたときに、ショートバウンドになった球を打って外野手の前に落ちるヒットにしたのを見たことがある。こんなことを真似できる選手はどこを探してもいないだろう。
低めのうちでも、特に内角低めに強いようだ。10/2(土)朝のフジテレビの「めざましどようび」という番組で、なぜあんなに低めに強いのかという謎を解明していた。そのわけは、やっぱり、あのバッティングセンターにあった。子供の頃に通った名古屋空港近くの『空港バッティングセンター』のおじさんが、イチロー少年が打つときだけ、球が低めに行くようにピッチングマシンをセットしていたというのだ。だから、低めの球を打つのが苦にならなくなった。
その番組では、イチローがヒットを打った場面を記録したすべてのビデオを3日かかって調査した結果、イチローがヒットは2球目までにヒットを打つ確率が、49%と高いことが判明した。つまり、追い込まれる前に、ストライクを取りに行く球を打っているということだろうか。特定の球種を待たずに、来た球を選ばず何でも打っているということかもしれない。
ところで、そのバッティングセンターでは、イチロー親子に頼まれて、時速120キロしか出ないピッチングマシンを130キロ出るように改造したという。イチローはそこで合計400万円もつぎ込んだというお得意様だったからこそ、そういう要望に応えたのだろう。イチローはそれでも物足りないと、バッターボックスから1メートル前に立って打っていたという。それでもバッティングセンターに勤める人が、イチローが空振りするところを見たことがなかったというから、すごい子供だったのだ。

野球の常識を捨てた男

イチローはいろんな意味で野球の常識を覆した。たとえばその一つとして、内野安打がある。普通の打者では、内野安打というのは「1本儲けた」ぐらいは思うだろうが、あんまり名誉に思うものではなかった。だがイチローの場合は、内野に球速が死んだ球が転がると、客席が沸く。
球を地面に叩きつけるように打つ場合は、あきらかに、わざと球速を「殺して」ボールを転がしているのだ。ライナー性の打球でも同じで、当たりが良すぎて外野手に捕られてしまうことを避けるように、飛距離を調整して打っているようにも見える。

野球の「常識」という点では、今の野球は「セオリー、セオリー」とバカみたいにセオリーにこだわりすぎているのではないかと常々思う。つまりは「自分で考える」ということをしていないのではないか。
数日前の中日戦で、落合監督はノースリーから「打て」のサインを出した。その結果がホームランだ。サインを出した理由は「1アウトのノースリーがいちばん打ちやすいから」という。また、右ピッチャーに対して右打者の代打を出して成功したこともある。その理由は、その打者が選球眼がいちばんいいからということだった。普通だったら、非難轟々だろう。その点やっぱり落合監督は頭がいい人だと思う。逆にいうと、他の野球選手や監督が「頭わるいんじゃないの」と思うほど考えることが単純すぎるのかもしれない。
あと、一言言わせてもらえば、打者には一球一球サインなんて出さずに自由に打たせればいいのに、ということだ。プロ野球の試合がダラダラと長くなってしまうのも、そこらへんにも原因があるだろう。

そのセオリーを無視して、自分の道を築いていったのがイチローだろう。イチローが打った球は、統計上は一二塁間、二遊間、三遊間の3方向のいずれかに飛ぶ場合が多いのではないかと思う。そういうコンピューター解析した映像をどこかのテレビで出してほしいものだ。イチローは野手の守備位置をよく観察して、明らかに野手がいないところを狙って打っている場合が多いのではないか。

求道者

イチローのすごいところは、どんなすごい記録を作っても、これで満足ということがなく、常に求道的であり続けるところだ。そしてその寡黙な口から出る自分の打撃に関するコメントは、哲学的というか「禅的」でもある。そこには「たかが野球」などと人に言わせない奥深さがある。

イチローの外貌は、およそスポーツ選手的ではない。そのかもし出す雰囲気からしても、学者的あるいはエンジニア的でさえあって、繊細さがにじみ出ている。
イチローがマスコミから「そっけない」とか「無愛想」とか言われてしまうのは、スポーツ選手としては繊細すぎることから来るものだろう。街角でファンのサインの要求に応じないというようなことも、練習中にサングラスをかけたりするのも、人間としての繊細さから来るものだろう。人と交わることが得意ではないということもあるのだろう。だが、サインに応じないという点は「職人気質だから」ということではアメリカのファンたちは納得しないだろう。偉大な大リーグ選手になるためには、改善しなければならない。ファンを大切にするのが偉大なメジャー選手と思われているからだ。

数日前のテレビで、イチローと対戦してヒットを打たれたピッチャーが、試合後のインタビューで「イチローとの対戦はいつも楽しめる」と言っているのを見た。またイチローはといえば、苦手としているピッチャーとも、対戦するのが「楽しみだ」というのだ。秀でた選手同士でしかわからない感覚をもって、勝負というものを超越して野球を楽しんでいるのだろう。

テレビで米国のイチローファンのある女性が「イチローが出てきて日本に対する見方が変わった。イチローによって日本が身近に思えてきた」と言っていた。
「日本人って確かにお金儲けのことしか頭にない人が多いけれど(それはあなたたちアメリカ人も同じだけど)、中にはイチローのような素晴らしい人もいるのですよ」とアメリカ人たちに言ってあげたいものだ。

今日の格言
「天才とは、セオリーを無視して振る舞い、結果として自分独自のセオリーを作り出す人のことである」

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