日頃のフラストレイションを発散させるが如く、どんどん行きます。
次に紹介する本は、これも諏訪信仰をメインテーマとしたもの。
『竜神信仰−諏訪神のルーツをさぐる−諏訪神のルーツをさぐる』、大庭祐輔著、論創社
- 作者: 大庭祐輔
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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これは、2007/04/15(日)の諏訪大社上社の御頭祭に行った際に、車中で読むにふさわしい本ということで買い求めたもの。
ちょうど1年ぐらい前に出た本だ。
著者は画家であるが、民俗研究も行うという人。
この本の冒頭に「諏訪信仰がわかれば、日本の古代がわかる」という言葉が紹介されている。
それくらい、諏訪の信仰というのは古代日本にとって特異なものをもっており、またその謎を解けば日本の古代史が見えてくるという意味では、たしかにそうだろうと思う。
著者が書いているように、日本海と太平洋、西国と東国の中心に位置し、あらゆる文化が吹き溜まり、独特の文化圏を形成していたのだ。
本書は、諏訪信仰の民俗誌であると同時に、天竜川の民俗誌でもある。
古代海人の安曇族が北九州から竜神信仰を携えて諏訪に流入してきたというのが著者の仮説だという。
古代朝鮮には、「天に竜が住んでおり、雨と共にすいちゅうにおりる」という『天竜』という概念があったが、こうした文化や信仰が伊勢を経由して、もう一つは出雲から日本海を経て、越後から諏訪にもたらされ、融合したというのが、この本のテーマでもある。
伊勢と諏訪
著者はまず、伊勢と諏訪との結びつきについて考察する。
そして、伊勢の方にもミシャグジ信仰が見られることに注目する。
諏訪の土着信仰の対象であったミシャグジ神は、伊勢地方の長白羽や天白神と同神か眷属であった可能性があるとして、さらに大和・伊勢・諏訪などで見られる姓神である境神、サカイノカミ、岐神(フナドノカミ)と習合した形も想定する。
岐神といえば、クナトノカミなどともされて、今日別の記事で紹介したばかりの『謎の出雲帝国』で登場したばかりの「出雲の大神」だというのだが、道端の道祖神が本当にかつては出雲の最高神だったのだろうかと、どうしても考えてしまう。
そしてそれが、本当にミシャグジ神と同一の存在なのだろうか。
自分的には、ミシャグジ神はあくまでも諏訪の先住の神である漏矢族が奉じた神であり、あとから侵入してきたと思われる出雲族の神であるクナトノカミとは分けて考える必要があるのではないかと思う。
そういうことを考えて詠み進めていくと、「二 諏訪信仰の謎」の章では、「ミシャグチの神と賽の神」として更に掘り下げられていた。
ここでは、ミシャグチ(シャゴジ)、石棒、天白神というようなキーワードで伊勢と諏訪が結びつくことを説いている。
また、道祖神・サイの神やミシャグチのルーツと考えられるものが、韓国に見られると述べている。
後の章では、伊勢と諏訪を結ぶ神々について更に論考されている。
たとえば、天日別(アメノヒワケ)神が伊勢の国津神である伊勢津彦神を信濃国へ追放したという伝承。
この伊勢津彦については、タケミナカタ神との共通点が多いことから、私も以前から注目していた。
そして、タケミナカタ神が入ってきたルートとして、伊勢→諏訪と古志→諏訪という2つの可能性を考えていた。
いまだに、そのどちらが正しいかという結論は出せずにいるが。
著者が日本古代史について非常に造詣が深いこともあって、この本は読んでいて飽きさせないものがある。
3000円と値段がちょっと張るが、300ページとそれなりのボリュームはあり、謎のタケミナカタ神のルーツについて考察するためには、色々なヒントを与えてくれる本だろう。
個人的には、「出雲族=竜蛇族」の感を深めた1冊だった。