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真言密教・チベット仏教とキリスト教


今日は、真言密教チベット仏教キリスト教の関係について書いてみたい。
昨日、護国寺四川大地震の供養で、チベット仏教の読経に接する機会があって、チベット仏教に興味が向いてきた。
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真言密教チベット仏教キリスト教に、いったいどんな関係があるのか?」と思われるだろう。
以前に何度か書いているように、真言密教弘法大師空海が唐で学んだ際に、景教ネストリウス派キリスト教)にかなり影響を受けたと思われる節がある。
またチベットは、今回の四川大地震で大きな被害を受けた羌岷族(チベット・チャン族)が古代イスラエル10支族だった可能性が強いということもあるが、それだけではない。
…というようなことを、これからちょっと書いてみたい。

『仏教の中のユダヤ文化』

昨日の夜、寝る前に『仏教の中のユダヤ文化』(久保田有政著、学研)をパラパラとめくって再読していた。
この本については、以前の記事で紹介してある。
http://d.hatena.ne.jp/nmomose/20080215/israel


著者の久保田有政氏は、古代イスラエル10支族が古代日本に渡来した可能性について、キリスト教の立場から真面目に研究している人だ。
神道の中のユダヤ文化』という本も書いているが、こちらの本では、仏教に入り込んでいるキリスト教の影響について主に取り上げている。

使徒トマスはインドやチベットに伝道した?

この本では、まず大乗仏教というものが、キリスト教の大きな影響を受けてつくられたものだということを主張している。
著者によると、インドの高名な宗教学者アーマンド・シャー博士は、「キリストの使徒トマスの福音に対抗して、釈迦を聖人から救い主に昇格させたのが大乗仏教である」と言っているそうだ。


ここで使徒トマスとは、イエスの12使徒の一人だった人物だ。
聖トマスはイエスの死後インドまで赴いて宣教し、そこで殉教したとされている。
『トマス行伝』という新約聖書外典があるが、トマスの死後に弟子か誰かによって書かれたのだろうとされている。
トマスという人物が実在したかどうかは、史実的な裏づけはないとされているが、『トマス行伝』にインドの王として記録されているグンダファルという人物が、さいきん発掘された当時の貨幣によって実在していたことが判明している。
インドではトマと呼ばれ、トマが建てたという伝承のある教会があるのだから、やはり実在したのだろう。


久保田氏によれば、トマスはインドだけでなく、中国やチベットまでも伝道の旅に出たという。
実際チベット仏教にはキリスト教の影響と思われる要素が多いが、それは後述する。

大乗仏教キリスト教を元につくられた?

前述のアーマンド・シャー博士の説だが、それを裏付けることはいろいろある。
大乗仏教の基礎づくりは、竜樹(ナーガルジュナ)によって始まったとされる。
竜樹の生きた西暦150年〜250年頃は、ちょうどインドにキリスト教徒が爆発的に増えつつあった時代だった。
当時、一部の限られた出家者しか救われないとされていたのに対し、キリスト教では「主の御名を呼ぶ者は誰でも救われる」と説いていた。


この本では、阿弥陀信仰や法華経信仰も、キリスト教の影響によってつくられていったと主張している。
詳しく書いている余裕はないが、なかなか説得力のある内容なので、一読をお奨めする。

真言密教景教の影響が強い

弘法大師空海が創始した真言密教も、キリスト教景教)に影響された要素が多々ある。
そのことについては、このブログで何度か書いてきた。
景教とは、ネストリウス派の中国での呼び名で、古代キリスト教の教派のひとつだ。
コンスタンティノポリス総主教のネストリオスにより説かれた教えだった。


ネストリウス派では、キリストの神格と人格との2つの位格に分離され、キリストを生んだマリアが神の母であることを否定している。
その教義は、431年にエフェソス公会議で異端として排斥された。
ネストリウス派は異端としてローマを追われ、シリアペルシャを経て、シルクロードの各地にその教えを広めていった。
現在でも、アッシリア東方教会にその教義が伝わっている。
景教については、下記のページが詳しい。↓


上記「景教の謎」サイトにもあるように、空海が留学していた当時の唐の長安では、西方から伝わったマニ教ユダヤ教 ゾロアスター教景教など、さなざまな宗教が存在した。
そこで若き空海は、景教が説くイエスの教えに少なからず影響を受けたのではないかと考えた人々がいた。
司馬遼太郎なども『空海の風景』を読むと、そのように考えた一人だったようだ。

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈下〉 (中公文庫)

空海の風景〈下〉 (中公文庫)


真言密教景教の影響がどのくらいあったのかについては、ケン・ジョセフ・シニア&ジュニア著の『【隠された】十字架の国・日本』に詳しい。
先祖がアッシリア景教徒だったというこの父子によると、古代日本には既にキリスト教が入り込んでいて、それをもたらしたのが、あの古代豪族の秦氏だったという。


景教が古代の日本に入り込んでいたということについては、景教の研究で世界的に権威がある故佐伯好郎博士の説が有名だ。
ちなみに、あの騎馬民族渡来説を唱えた故江上波夫博士は、佐伯博士の弟子だった。
そのへんの事情は、下記の私のコラムで紹介している。↓


上記ページに書いているように、なんと江上氏も、古代日本にキリスト教が入っていたと考えていたようだ。
だがそれは景教ではなく、原始基督教としてだが。
その点については、私も同じように考えている。


…と、このペースで書いていると収拾つかなくなってきそうなので、以後は手短に。^^;
『仏教の中のユダヤ文化』と『【隠された】十字架の国・日本』の中から、真言密教景教の影響を受けていると思われる点を以下にピックアップしておく。


ケン・ジョセフ親子の本については、平山郁夫氏や永六輔氏も帯で推薦の言葉を書いているが、久保田氏の著作と同じくらいに読み応えある本だ。

隠された十字架の国・日本―逆説の古代史

隠された十字架の国・日本―逆説の古代史

チベット仏教にもキリスト教の影響が

ケン・ジョセフ親子と久保田有政氏の本では、チベット仏教景教の影響を強く受けていると主張している。
前述の使徒トマスがチベットを訪れたかどうかについては、自分的にはまだなんとも言えない部分がある。
だが、ネストリウス派景教徒)が古代のチベットを訪れていたというのは、どうも本当らしい。


上記2冊によれば、西暦1000年ごろには、チベット仏教景教的要素を多く取り入れていたそうだ。
たとえば、赤い僧衣、聖水、死人のために祈ること、厄除けなどが、元は景教の風習だったという。
また、7世紀頃からチベットの文献に見えるシャンバラ伝承も、精霊の軍団を率いる王がいて、やがて起きる最終戦争に勝利した後で永遠の黄金時代を迎えるというあたりに、キリスト教イスラム教の影響が見られると、百科事典にも書かれている。


チベット仏教は、仏教という名がついてはいるが、古代からあった土着の宗教に加えて、キリスト教景教)、大乗仏教、タントラなどの要素が入り込んで形成されていった混合的な宗教のようだ。
古代のチベットに、すでにキリスト教の教えが伝わっていたということは、インドのキリスト教のサドゥ(聖者)だったサンダー・シング(スンダル・シング)師の体験にも見られる。


下記ページによると、シング師はイエスの福音を携えてインド、ネパール、ヒマラヤ、チベットなどを旅した。
そして、チベット仏教の寺院で、イエスの福音を記した巻物を発見した。
それは、古代のネストリウス派宣教師たちが、千数百年も前にすでにチベットで福音を宣べ伝えていた痕跡だった。

イエスはインドやチベットへ行ったか?

蛇足になるが、ナザレのイエスは、少年時代にインドやチベットを旅したという説がある。
これについては長くなるので書かないが、私の著作『ヴィア・ドロローサ〜イエスが歩いた悲しみの道』で、この説を詳細に考察している。

観音さまはどうか?

最後に、チベット仏教といえば観音信仰がさかんなところなので、これについても書いておく。
観音さまは、本来は観世音菩薩または観自在菩薩という。
観音菩薩の起源については、『法華経』浄土経教典などに関連があるとする説がある。
また、ゾロアスター教の女神アナーヒターやヒンドゥー教のラクシュミーと関連があるとも指摘されている。
『仏教の中のユダヤ文化』では、インドにおいて東方キリスト教徒が伝えていたメシアと、ヒンドゥー教の神々の観念が結合して観音信仰が生まれたとしている。
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『【隠された】十字架の国・日本』では、興味深い写真が紹介されている。
米国の景教の教会で礼拝後の女性を写したものなのだが、その格好はわれわれが見慣れている観音様そっくりなのだ。


また、中国から伝わった慈母観音というのもある。
赤子をやさしく抱く母の像として、日本では子安観音や子安神などとして伝わっている。
久保田氏によると、これもまた景教の影響によって生まれたものだという。
だが、景教基本的にマリア信仰はなかったと思われるので、あったとすれば、それは原始キリスト教だったかもしれない。


私は昨日、護国寺の観世音菩薩さまの前で、「オム・マニ・ペメ・フム」の真言を繰り返し唱えていた。
キリスト教の影響によって生まれた真言密教の寺で、キリスト教の影響が強かったチベット仏教の儀式を行い、その対象がまたキリスト教の影響があったかもしれない観音さまなのだから、巡り合わせとは面白いものだ。


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