横浜の「パークシティLaLa横浜」のマンション傾斜問題については、10/16の記事でも書いた。
その後も毎日のようにニュースで新しい事態が伝えられ、日本の建設業界全体に関わる大きな問題となっている。
私は地震のことを研究している関係上、”地盤”の問題は人一倍関心が強く、このニュースも注視していた。
みなさんご承知の通り、この件はもう、旭化成建材という1企業だけの問題ではなくなりつつある。
この企業に出向していた社員だけが不正を行ったというレベルの話ではないのだ。
その背後には、「杭打ちに関する不正など、いつでも誰でも行う可能性がある」という要素が表面化しつつある。
これから取り上げる内容は、非常にショックを受けたものだったが、同時に「やっぱりか…」という感もある。
旧態然にドロドロした建設業界の、もっとも汚い部分が露わになり始めているのだ。
10/21報道ステーション
まずは、10/21にテレビ朝日系列「報道ステーション」で紹介された内容。
今回データを偽装したのは、旭化成建材に出向していた現場代理人だった。
20年以上にわたり杭打ち作業に携わっていた元業者が登場。
その人物は、データ偽装で問題となっている旭化成建材の杭打ちも担当したことがあるという。
その元業者の言い分は、以下のとおり。
バブル崩壊以前は現場を選べたが、今は非常に苦しくなっている。
支持層に達していないということは、オペレーターはほぼ確実に気付くはずだ。
データ改ざんは、常時行われている。
これまでデータに目をつむったことは、ものすごい数に上る。
それを公表してしまえば、杭打ち業界全体が崩壊してしまう。
今までは不正を行って問題となったことがなかったために、まあいいだろうという判断がどこかの段階で発生した可能性はある。
「事情」の一番の理由は、厳しい工期にある。
元請けは今回三井住友建設になるが、三井住友建設は会うこともほとんど無い。
窓口は旭化成建材の職員になると思う。
旭化成は本来、品質には厳しい会社だ。
言ってしまえば、日本の高層ビルや高層マンションや公共の建物すべてにおいて、利益最優先などの結果として厳しい工期に迫られ、もっとも重要であるはずの杭打ちとその前のデータ調査など作業が疎かになっていったのだ。
データ改ざんや手抜き工事は、その結果として常態化してきたのだろうか。
これはもう、誰でも怒り新党でしょう。
原発問題のどこがいけないと言っているのかというと、金儲けのために人命をないがしろにしていること。
この杭打ち問題も同様で、震災による液状化現象などが起きれば、建物が倒壊して多数の死者が出る可能性があるのだ。
そこにはもう、人間の「良心」とかいうものは存在しない。
悪魔的な人々がいるだけだ。
しかも、その表現はごく一部の人間たちだけに帰せられるのではなく、企業全体、業界全体にまで渡るということ。
もっと言ってしまえば、今の日本社会の価値観そのものが、「倫理や良心よりも金儲け」に成り下がっているということ。
「自分たちさえ良ければ」という、集団的エゴイズム。
10/23日本テレニュース24
また、10/23の日本テレビ「日テレニュース24」では、旭化成建材の現場責任者の経験があるという男性が登場。
当時は、旭化成建材のそのまた下請けとして仕事が入ってきた。
その人は、横浜のマンションでデータ改ざんを行った現場責任者と同じ立場にいたこともある。
その人物が語った内容の要旨は、以下の通りだ。
【杭の一部が支持層まで届いていなかった件について】
今の工事現場は、工期やお金に対して非常にシビアになっていて、不測の事態が許されないのが現状となっている。
支持層が深くなった時でも、杭を入れ替えるのは難しい。
どこかの段階で、OKを出してしまったのではないか。
【施工データの改ざん理由について】
電流計のスイッチを入れ忘れたり、用紙切れになったりすることは多々ある。
データを取れなかった場合は、「何とかしろ」(自分で改ざんして作れ)と暗に言われることもある。
【データ改ざんの常態化】
地震などで傾いたという話は、今まで一切ない。
不正が多数あることは知っていたが、たとえあってもビルが傾くことはないだろうと思っていた。
これは業界全体の問題だろう。
旭化成建材は施工管理が厳しい会社で、他の会社ではもっと改ざんが多いと思う。
このような業界全体の構造的な問題があり、旭化成建材はたまたま光が当たっただけで、いつ自分たちが責められる時が来るかと、他者は戦々恐々としていることだろう。
高橋学氏:杭打ち作業は不正だらけ
これまで、TOCANAの記事などで、地盤の問題に触れる際に度々紹介してきたが、立命館大の高橋学教授(災害リスクマネジメント)は、この分野に詳しい。
10/21の『日刊ゲンダイ』では、この人もかなり衝撃的な実態を暴露している。
以下に一部を引用する。
マンション建設の経費を安くするために手を抜くなら、外から見えない『地質調査』や『杭打ち』工程になるのです。例えば、マンション建設前に行う地質調査のためのボーリングは、1メートル機械を差し込むごとに30センチ地層を取り出して調べますが、安くても1メートルにつきおよそ2万円かかる。単純計算で、20メートル下に杭を打つなら40万円、40メートルなら80万円かかります。また、実際に杭を打つ工程では、コンクリートの杭は1本7~8メートルで、20メートル先まで打つには2本、40メートル先には4本以上杭が必要になる。杭の長さが長くなればなるほど、お金も作業時間も倍以上になります。さらに近所からの騒音に対する苦情も多いため、不正に走る会社は少なくないのです
www.nikkan-gendai.com
もう、わかるでしょう。
いったん”倫理観”が欠如してしまえば、あとはもう、やりたい放題なのだろう。
たぶん、そういう人たちは、その後に起きる大震災でマンションが倒壊しようが、「そんなの知ったこっちゃない」のだろう。
自分たちの給料や会社の利益が大事なのだ。
さらに高橋教授は、パークシティLaLa横浜周辺の地盤について、こう語っている。
杭打ち不正の横浜のマンションは地下に約2万年前の氷河期に100メートルほど低下した海水面に向かって流れる川が深い谷を刻んでいます。その上に縄文時代の温暖な時期に海が侵入し、プリンのように軟らかい粘土が海の底にたまっている場所。国土地理院のホームページで見ることができます。昭和21年ごろの航空写真を見ると、マンション付近は暗い色で写っています。鶴見川の『後背湿地』で、低湿で軟弱な湿田です。洪水にも地震にも弱いところです。マンションに隣接している大型商業施設付近の地名は『池辺』といいます。横浜市もマンション建設会社も、人が住むことを避けてきたこの土地の性格を知らないわけがありません。自分のマンションが気になる人は航空写真を確認してみるといいでしょう。大型商業施設、公園、学校などを建てるのは、人が住みつかずに売れなかった広い場所です。
私はTOCANAやこのブログで何度も警告しているが、大震災からのサバイバルという点では、もっとも重視すべきは、地盤の問題だ。
軟弱地盤の土地に住んでいれば、その上に建つ家をいくら耐震補強したって、無駄になってしまうこともあるのだ。
地盤の良し悪しで被害の境界がはっきり分かれたのが、1995年の阪神淡路大震災だった。
高橋氏が携わる「環境考古学」には、以前から注目していた。
地盤の弱い土地を知るには、その土地の歴史を十分に知るべきだという観点から出発している。
阪神淡路大震災では、いわゆる旧河道、つまり昔は川だった土地で多くの建物倒壊があったということが明らかになった。
高橋氏は、東京23区などの液状化が懸念される軟弱地盤の土地に高層ビルを建てる時でも、支持層まで達する杭を打っていれば安心だと語っている。
だが、それは「杭打ちが不正なしに行われた」場合のみに当てはまるだろう。
実際に東京で、横浜のマンションのような不正が数多く行われていれば、首都直下地震が起きた時には、「想定外」の事態があちこちで起きてしまうのではないか。
軟弱地盤の土地には、住まないに越したことはない。
たとえ住まざるを得ない場合でも、たとえば東京だったら、23区の東半分あたり。
パークシティLaLa横浜のような不正が行われていないかどうか、調べることができれば、やった方が良いだろう。

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Facebookで回ってきた動画、メッチャ面白いから見てください。
これ見て笑わない人って少ないと思う。
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Wait For It!This is what happens to all British peoples teeth when we blow out our Birthday cake candles!
Posted by EC Twins on 2015年5月27日
京王フローラルガーデンのタイランドフェアに来ています。タイ人は顔パスで無料。いろいろあって楽しいよ。明日25日まで。Thailand Fair in Keio Floral Garden.
【今日の食卓】京王フローラルガーデンのタイランドフェアで、マッサマンカレー、クィッティオ・ナーム、パッタイ各500円。マッサマンはスタッフのまかない用をサルちゃんが交渉して分けてもらい私が食べた。老舗サワディーの調理だけあって、どれも美味しい。Gean Massaman, Kuittiao nam & Pad Thai. Aroi.
【愛弥美】西武新宿線なう。これから京王フローラルガーデンのタイランドフェアへ。Going to the Thailand Fair at Keio Floral Garden.