今日は思うところあって、日本の太平洋側の海溝型の大地震の発生時期を調べたところ、発生する季節に偏りがあった。
自分が住む地域の防災上役に立つ情報だと思われるので、紹介する。
地震発生の季節的偏り?
通常、日本で起きる大地震の発生時期には、発生月や季節に大きな偏りがなく、いつでも起こり得るとされていた。
それには例外があって、今ではよく知られるようになったが、南海トラフ巨大地震はすべて7月~2月に発生している。
このようなデータの解析は、かつてソフト屋として25年ほど仕事をしていたために、得意分野だ。
プログラマーというのは、言ってみれば、一見無秩序に思われる集団から秩序を見つけ出すことにある。
このような仕事を長年やってきたために、日常生活の中でも神羅万象の中から「木を見ずに森を見る」習慣が身についてしまっている。
それが今の研究や物書きの仕事で、大いに役立っているとはいえるだろう。
物事の本質を瞬時にして掴み取る、みたいな。
地震発生の季節的偏りについては、すばらしい仕事をされた先覚者がいた。
「日本付近の大地震発生の季節変動と地域性」
その先覚者とは、以前にこのブログやTOCANAでその業績を紹介したことがある方だ。
それは、元気象庁精密地震観測室・室長の岡田正実氏。
岡田氏は、1981年に発表した論文「日本付近の大地震発生の季節変動と地域性」で、1884年以降に発生したM7.5以上の被害地震の発生月を調べた。
その際に、下記の図のように3つの区域に分けてデータを解析した。
地域毎の季節の偏り
すると、以下のような傾向があることがわかった。
・千島沖(K):4回すべてが8~11月。 →夏~秋
・親潮域(A):14回中10回が3~5月、11回が春~夏に集中。
・黒潮域(B):24回中19回が8~12月(11~12月が最多)。
・冬季に積雪や凍結が多い地域(S):春から夏に集中。
・その他の本州内陸(I):6~9月に集中。
以上のことは、下記の昨年3月の記事と、そこからリンクしているTOCANAの記事で紹介している。
これは非常に重要な研究で、自分が住む地域で、いつ頃に大地震・津波が起こり得るかを把握していれば、減災に役立つことだろう。
最新のデータ
この論文執筆時から既に40年弱経過しているため、それ以降の大地震ではどういう傾向があるだろうか。
それを知りたくなって、1981年以降に、千島沖・親潮域・黒潮域で発生したM7.5以上の地震を調べてみた。
追加すべき地震データは、以下のようになる。
凡例: (K):千島沖、(A):親潮域、(B):黒潮域
(B)1984/03/06:鳥島近海 - M7.6
(A)1993/01/15:釧路沖 - M7.5
(K)1994/10/04:北海道東方沖 - M8.2
(A)1994/12/28:三陸はるか沖地震 - M7.6
(K)1995/12/04:択捉島南東沖 - M7.3
(B)2000/03/28:硫黄島近海 - M7.9
(A)2003/09/26:十勝沖 - M8.0
(A)2011/03/11:東北地方太平洋沖地震 - Mw9.0-9.1
(B)2015/05/30:小笠原諸島西方沖 - M8.1
季節の偏りが若干変わってきた
これを地域別にまとめると、以下のようになる。
・千島沖 (K):4回すべてが8~11月 →夏~秋
→8回中6回が8~12月。→夏~初冬
・親潮域 (A):14回中10回が3~5月、11回が春~夏に集中。
→18回中11回が3~5月、12回が春~夏に集中。
・黒潮域(B):24回中19回が8~12月(11~12月が最多)。
→27回中19回が8~12月(11~12月が最多)
このように、赤字で示した方が最新の地震発生の傾向となる。
たとえば千島沖では、過去には8月~11月ときれいにまとまっていたのが、そうではなくなってきた。
だが、これでもある程度の傾向が見えるだろう。
ただし、親潮域の18回中11回というのは、あまり顕著な傾向とは言えないが。
ここでは南海トラフ巨大地震も含まれるが、対象期間では昭和の2回の地震だけだ。
この最新のデータを見ると、千島沖と黒潮域は、いずれも8月~12月頃に地震が多くなるといえる。
また、東日本大震災を含めた親潮域の場合は、3月~5月に最も発生しやすいことになる。
海水温の影響?
こうした傾向が、「なぜ」あるのかということは、今のところは解釈が難しいだろう。
だが、岡田氏がたどり着いていたように、太平洋の潮流に起因する海水温に何らかの要因があるだろうと推測される。
現在発生中の黒潮大蛇行の発生中に、過去に南海トラフ巨大地震が起きたことがなかったのも、海水温に関係があるのではないかと見当をつけている。
黒潮大蛇行の発生中は、下記の図のように海水の低温域ができる。
これは「冷水塊」(れいすいかい)と呼ばれる。
ちょうど南海トラフのあたりが、冷水塊によって何らかの影響を受けて地震の発生が抑制されるのだろうか。
私はいつも、黒潮大蛇行が南海トラフの「守り神」と言っているが、実際は冷水塊こそが守り神さまなのかもしれない。
その他の地域
岡田氏の地域分けでは、下記の2つもあるが、今回は近年のデータを調べる余裕がなくなった。
・冬季に積雪や凍結が多い地域(S):春から夏に集中。
・その他の本州内陸(I):6~9月に集中。
Sに関しては、冬季に積雪が多いために、積雪の重みが地下の活動に影響を与えるということだろう。
その影響で実際に地震が起きるのが、春以降に多くなるということのようだ。
Iについては、主に西日本の内陸地震となるが、なぜ夏の時期に集中するのかはわからない。
最近では、昨年6月18日の大阪府北部地震(M6.1)がこれに該当する。
これら2つの1981年以降も含めた傾向については、また後日調べることにしたい。
南海トラフ巨大地震は、今すぐには起きないと予測しているが、千島海溝の巨大地震はそのような縛りがない。
だが、今回見てきたように、8~12月に多く発生する傾向はある。
いつ起きてもおかしくないとされている巨大地震だが、これから8月以降の今年いっぱいは、もっとも警戒すべき期間に入るため、北海道や東北の太平洋沿いに住まわれる方々は特に、その意識を常に持っていてください。
今日の地震前兆
ちび子の運動量は以下の通り。
【ハムスター】6/15朝、カウンター値:296。 @kokanranger 報告 #hamster #地震予知 #ハムスター地震予知 #ハムスター #ジャンガリアンハムスター
多少増えた程度。
ラドン濃度は下記の通りだが、雨が降り続いているので、正確な判断ができない状態だ。
昨夜強い耳鳴りが続いていたのは、昨夜6月14日23時33分の茨城県沖M3.5、最大震度1の影響か。
今は多少下降を始めたが、振幅は大したことがないので揺れるとしても小規模か、または遠めだろう。
昨夜のイオノグラムで国分寺がかなり真っ赤になって、揺れそうだと書いたが、それも茨城沖の前兆だったのだろう。
【参考】
「日本付近の大地震発生の季節変動と地域性」(PDF)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin1948/35/1/35_1_53/_pdf
これはFacebookで流したもので、それ以外のSNSはどうしても情報提供の優先度が落ちてしまうことも。
シンクロ的に色々来たので、この夏あたりは気を付けてください。