オーストラリアで続いている熱波(猛暑)により、大規模な森林火災も発生しているが、この原因となっているのが、インド洋で発生中の「ダイポールモード現象」というもので、これとインド洋や日本の猛暑や大地震の発生に関係があるかどうかを検討する。
また、このオーストラリアの山火事により、多くのコアラが命を奪われ火傷を負っていることに対して、われわれにできることがあるかを考える。
オーストラリアの熱波と森林火災
オーストラリアでは、昨年末から「メガファイア」と称される深刻な山火事が起きている。
これにより、人間だけでなく、コアラなどの動物たちも大きな被害を受けている。
Googleで「koala australia fire」で過去1カ月に絞って画像検索すると、火傷をしたコアラの悲惨な姿が次から次へと出てくる。
ダイポールモード現象
オーストラリアの異常高温の原因は、西部のインド洋の熱帯領域の海面の温度が、西側では例年以上に高く、東側は逆に例年以上に低いためだ。
この現象を「ダイポールモード現象(Indian Ocean Dipole、IOD)と呼ぶ。
上記だけを読むと「ん?」となるかもしれない。
オーストラリアあたりで海水温が低くなると、どうして熱波となるのか?と。
もう少し補足すると…。
熱帯インド洋に正の(後述)ダイポールモード現象が発生すると、インド洋東部から海大陸周辺にかけて、海水温が低下する。
すると、対流活動が抑制され、インドネシアやオーストラリアでは干ばつが発生する。
そうなると、水不足による農業への影響や、今回のように山火事の多発の原因にもなる。
ダイポールモード現象の発生中には、日本の気候にも大きな影響を受ける。
南にある高気圧が例年より強く、上空の偏西風は北に蛇行して、寒気が南下しにくい状態が続くのだ。
ただし、日本の高温傾向は、2月には平年並みの気温に落ち着く可能性が高いという。
正負のダイポールモード現象とエルニーニョ
ダイポールモード現象は、エルニーニョ現象と独立して発生することもあれば、エルニーニョ現象を誘発する場合もあるという。
下記の探求三昧Webの固定ページ『【研究】インド洋のダイポールモード現象とインド洋の大地震発生の関係』でも書いているが、インド洋熱帯域で初夏から晩秋にかけて東部で海水温が低くなり、西部で海水温が高くなる大気海洋現象を、「正のダイポールモード現象」と呼ぶこともある。
逆に、インド洋で逆に南東貿易風が弱まると、東から西への海流が滞るため高温の海水が東側に滞留し、西側は海水温が低下するが、これは「負のダイポールモード現象」と呼ばれる。
正のダイポールモード現象は、平均して5~6年に一度の頻度で、夏から秋にかけて発生する。
正のダイポールモード現象発生時の日本の大地震
以下に、正のダイポールモード現象発生年と、その年の夏~秋に日本で発生したM7.5以上の地震を示す。
◎正のダイポールモード現象発生年(1960年~2019年、M7.5以上)
1961年
8月12日 釧路沖 - M7.2
8月19日 北美濃地震 - M7.0
1963年
10月13日 択捉島沖地震 - M8.1
1972年
02月29日 八丈島東方沖 - M7.0
1982年
07月23日 茨城県沖 - M7.0
1983年
05月26日 日本海中部地震 - M7.7
06月21日 青森県西方沖 - M7.1
1994年 日本で記録的猛暑
07月22日 日本海北部 - M7.3
10月04日 北海道東方沖地震 - M8.2
10月09日 北海道東方沖 - M7.3
1997年
2006年 日本で記録的猛暑
2007年 日本で記録的猛暑
2008年 3年連続 日本で記録的猛暑
05月8日 茨城県沖 - M7.0
06月14日 岩手・宮城内陸地震 - M7.2
09月11日 十勝沖 - M7.1
2012年 日本で記録的猛暑
2015年
05月30日 小笠原諸島西方沖 - M8.1
11月14日 薩摩半島西方沖 - M7.1
2017年
2018年
2019年 3年連続
負のダイポールモード現象発生時の日本の大地震
次に、負のダイポールモード現象発生年と、その年の夏~秋に日本で起きたM7.5以上の地震を示す。
◎負のダイポールモード現象発生年(1960年~2019年、M7.5以上)
1960年
1964年
06月16日 新潟地震 - M7.5
1974年
11月30日 鳥島近海 - M7.3
1981年
1989年
11月02日 三陸沖 - M7.1
1992年
1996年
1998年
05月04日 石垣島南方沖地震 - M7.7
08月20日 小笠原諸島西方沖 - M7.1
2010年
11月30日 小笠原諸島西方沖 - M7.1
2014年
07月12日 福島県沖 - M7.0[212]
2016年
04月16日 熊本地震の本震 - M7.3
正負のダイポールモード現象と日本の地震
以上のデータをまとめると、正負のダイポールモード現象発生時(夏~秋)に、それぞれ下記の回数の大地震(M7.5以上)が発生していた。
正のダイポールモード現象:15年中15回
負のダイポールモード現象:11年中08回
これを見ると、そう顕著な相違は見られないようだ。
だが、正のダイポールモード現象が発生していた時には、ほぼ1年に一度大きな地震が起きていたことになり、多少は発生頻度が高いようだ。
今後は、別の観点から、ダイポールモード現象と日本で起きる地震の関係について探ることにしたい。
エルニーニョ現象やダイポールモード現象は、日本にとっては他人事ではない。
というのも、両者は日本の気候にも大きな影響を与えるからだ。
ダイポールモード現象が発生中は、日本では夏に猛暑になる傾向にある。
また、エルニーニョ現象の発生中は、西太平洋熱帯域の海面水温が低下し、西太平洋熱帯域で積乱雲の活動が不活発となる。
そのため、夏季は太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、気温が低く日照時間が少なくなる傾向がある。
また、西日本日本海側では降水量が多くなる傾向がある。
猛暑と大地震
猛暑の後で大地震が起きるという説もある。
たとえば、関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災の前の夏は猛暑だった。
下記の2018年8月の『週刊実話』の記事で、武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏などが、猛暑と地震の関連性について語っている。
また、『南海地震は予知できる』の著者である中村不二夫氏も、昭和南海地震の発生前には、12月にしては異常に暑かったことを挙げている。
猛暑と地震発生の関連性は、たしかに関係がある場合もあるだろうと思う。
われわれがコアラたちのために日本にいてできることは?
大腸がんの手術の後でも、正月でも、私の忙しさは変わらないということで、今さらかいと思われるかもしれないが、オーストラリアのコアラたちの惨状について、やっと調べる余裕ができた。
【コアラ寄付金】オーストラリアの森林火災では、豪全土で10万頭以下と言われるコアラのうち約2千頭が焼死したそう。コアラ病院では寄付ができます。明日1/6のブログでも紹介します。#オーストラリア森林火災 #コアラへの寄付 #コアラ病院
殊更にコアラだけが可哀想ということではない。
この山火事で犠牲になった鳥、動物、爬虫類の総数は、オーストラリア全土で4億8,000万にも及ぶ恐れがあるという。
だが、コアラはオーストラリアにしか生息していない動物であり、人間たちの営みの影響もあり、どんどん頭数が減ってきている。
それに輪をかけての森林火災で、絶滅寸前という声もある。
コアラは、オーストラリア東部の森林地帯やユーカリの林などに生息していて、オーストラリア本土に生息している野生のコアラの頭数は、10万頭以下と推定している。
その中で、今回の森林火災で、8000頭が命を奪われたという説もある。
コアラのために寄付をする
オーストラリアのコアラたちが助かるように、何とかしてあげたいと思う人は、コアラたちのために寄付をする手段がある。
寄付金というと、ちゃんと寄付金がコアラのために役立てつ機関に届くんかいなと思う人が少なくないだろう。
だが、この場合は下記の病院に渡されるようで、その心配はなさそうだ。
オーストラリアのポートマッコーリー・コアラ病院(Port Macquarie Koala Hospital)は、集められた寄付金により、コアラの保護・治療・リハビリ、水飲み場などの設置など生息地の再生を目指している。
私は昨日、この病院のサイトで直接募金をしたのだが、どうも今日はサーバーエラーで繋がらない。
昨夜も異常に重かったが、もしかするとアクセスが殺到してダウンした?
だが、別の「gofundme」というサイト経由で寄付する方法もある。
上記サイトにアクセスできない場合は、下記のgofundmeから試してみてください。
こちらの寄付金の支払い方法などの詳細は、下記の「PHOTORAVELLER」というブログの記事が非常に参考になる。
英語が苦手な人でも、懇切丁寧に操作方法を示してくれている。
ちなみに、病院へ直接寄付の場合は、オーストラリアドル単位で指定する形だった。
現在は、1オーストラリアドルは約76円くらいだ。
東日本大震災では、オーストラリアは、全部で4機保有する大型軍用輸送機のうち3機を日本支援に投入し、「パシフィック・アシスト作戦」と称して救護支援活動を行った。今回のオーストラリアの森林火災で、日本が知らん顔をしていて良いのだろうか。「自分に何ができるだろう?」の問いから全ては始まる。#オーストラリア森林火災