この記事のタイトルは最初「手塚治虫氏は反原発だった?」にするつもりだったけれど、手塚氏の著書のタイトルを借りることに。
このタイトルからして、遊星的郷愁を覚えてしまう。
一漫画家が原発推進か反原発だったかなんて、どーでもいいじゃないかと言われるかもしれない。
でも、「鉄腕アトム」などの作品で多くの子供たちや若者たちのその後の人生観に大きな影響を与えただろうと思うと、やはり探求すべきテーマだろう。
1989年4月に発売された、「ガラスの地球を救え」という手塚氏著の本がある。
手塚氏はそ年の2月9日に胃ガンで亡くなって、未完で出版された。
手術して入院中にも、亡くなる10日前まで作品を描き続けたという。
氏は「火の鳥」(未来編)で西暦3400年の死にかけた地球を描いたが、実際に「息も絶え絶えの星」になってしまったことを憂いて、この本を書いた。
「地球は死にかかっている」という認識は重要だろう。
嘘くさくなるかもしれないが、私などは小学生の頃からそうだった。
「生まれる前から」と書こうとしたが、やめた。
夜の星空を一人寂しく見上げながら、「この星はいつか滅亡するのかな」と思っていた。
私の今生は、すべてそこから始まっていた。
「バラ色の未来」ではなかった
「鉄腕アトム」に代表される氏の作品は、科学技術の進歩に裏打ちされたバラ色の未来を描いたものだと思っていた。
特別に手塚ファンでもなかったので、そんなバカな読み違いをしたのだろうか。
アトムも名の通り原子力で動いているから、原発賛美者に違いないとか。
だが、「ガラスの地球を救え」では、こう書かれていた。
あの作品は、進歩のみ目指して走る科学技術が社会に歪みをもたらし、人間や生命あるものを無残に傷つける様を描いたものなのだ、と。
この本では、こうも書いている。
自然への畏怖をなくし、傲慢になった人類には必ずしっぺ返しがくると思います。
(手塚治虫「ガラスの地球を救え」より)
「ああ、こういう発言をする人だったら、いま生きていたら絶対に反原発を唱えていただろうな」
いまこの本を久々に読み返してみて、そう思ったものだった。
原発事故にしても大震災にしても、科学技術への過信や自然に対する畏怖の心があれば、もうちょっと何とかなっていたもしれないと思ったりして。
その後、下記のブログで、手塚氏が原発に反対している著述を残していたことを知った。
こちらでは、手塚氏の発言をそのまま読める。
生命は有限か
手塚氏は、生命(魂)の永遠性についても言及されている。
生命というものが有限で、ある時がきたら、すべての愛するもの、父母、妻や夫、子ども、恋人、そして自分自身にも永遠に別れを告げなくてはならないなんて、じつに不条理なことではあります。
この本を読むまでちょっと意外だったが、考えてみると、あの「火の鳥」や「ブッダ」を描いた人だ。
こういう発言が出てきても不思議ではないと思うべきだった。
私は死後の生命や転生輪廻を受け入れるのは、長年の探求・研究の末にたどり着いたというのもあるけれど、それ以前に、やはり理にかなった摂理だと思う。
手塚氏は、退院後の作品の計画を山ほどもっていた。
だが、氏の魂は死期を悟ってこのような切羽詰まった本を書かせたのではないか。
文庫版としてまだ出ているので、特に若い人たちに読んでほしい本です。
◎「ガラスの地球を救え」

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山岸凉子さん
反原発+漫画ということで、山岸凉子さんのことを思い出した。
白状してしまうけれど、私は「お涼さま」の妖しい作品が大好きでした。
成人してからはマンガというのはあまり読まなくなったけれど、この人の作品は最後まで読んでいた。
今日Twitterでもツイートしたけれど、20年以上も前に反原発の作品を描いていたんですね。
「パエトーン」という作品です。
いまでこそ大震災の後で反原発を支持する人が増えたけれど、当時はかなり風当たりが激しかったでしょうね。
出版社などから圧力(?)もあったかもしれない。
お涼さまが偉いのは、こういう作品を描いただけでなく、大震災の後にいち早くこの作品を無償公開したことです。
こちらで読むことができます。

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